ビールは、とっておきの料理との相性を楽しんだり、仲間とともにグラスをひたすらあけまくったり、或いはハレの席での乾杯であったり、料理を作りながらの一杯であったり、様々な形で私達の日常生活に溶け込んでいる。
そのような、みなさんが自由に飲んでいる姿を目に浮かべながらビール造りに日々励んでいるわけだが、自身がクラフトビールを初めて飲んだ時の原体験というのも色濃く頭に残っており、こことのバランス感をいつも考えている。
それは、クラシカルなビールがある一方で、今まで出会ったことのない香りや味わいであって、これがビールなのか?と既存概念を覆す出会いである。これがとても面白い。
そこには既存のニーズやウォンツとは別の、画一的ではなく多様で、創造的な世界。そんな尽きることのないものづくり、それもビール醸造である。
DANDELION CHOCOLATEとのコラボレーションでは、従来「クラシカルなチョコレート或いはカカオのフレーバー」を表現することに目指したレシピ設計であったが、今回方向性をまったく変えてみたくなった。
そんな話を(ビールを飲みながら)していると、DANDELION CHOCOLATEの物江さんから
「ALL IN ONEでカカオポッドを丸ごと使ったビールがつくれないか」
というワクワクするアイデアが出た。
そんなことが出来るのか?
そうして話を進めていくと、どうやらカカオの中にある果肉に可能性があるかもしれないという話に。
そもそも、カカオ(ポッド)はどのようにできるかご存じだろうか。
カカオの木は成長すると小さな花を咲かせ、虫たちの働きによって受粉し、小さいフットボールみたいな形をしたカカオポッドに成長する。このカカオポッドは中に種子をつくる。この種子がカカオ豆である。
カカオポッドの成熟を待ち、収穫したら割って種子を取り除いてから発酵と乾燥を施す。ここがカカオ豆のフレーバーを決めるポイントだそうだ。
また、乾燥させることで状態が安定し、流通が可能になり、おかげさまで日本でもカカオを手に入ることが出来る。
カカオポッドの中の種子は、ネバネバした果肉に包まれているのだが、じつはこのカカオパルプと呼ばれる果肉はライチの様な風味で大変美味しいらしい。
カカオ農園で働く生産者たちがババと呼んでいるそのカカオパルプを日本でも手に入れることができ、DANDELION CHOCOLATE蔵前店でも味わうことが出来ると聞いて試食(試飲)に行ってみた。
独特の香りを放つカカオパルプはやはり粘性があり、強めに吸い込んで口の中に含むと爽やかでフルーティな酸味があり、ライチの様なフレーバーが広がった。まさにカカオのフルーツである。
これをビールに使ってみよう!
そうしてここから方向性やベースビールを決め、レシピを設計していった。
この時醸造を担当した藤咲は、フランダースレッドエールからのインスピレーションから、これをヒントに赤みがかった甘酸っぱいサワーエールをイメージしたレシピを書きあげていった。DANDELION CHOCOLATE でチョコレート・プロダクションを担当する古野さんのアドバイスも頂きながらカカオニブを選択し、フーダーで熟成させたような深みのあるフレーバーを目指していった。
造り手たち自身も最終的にどのように仕上がっていくか想像できない中でベストを尽くし、ようやくようやく完成した。
今回カカオのかかわり方、視点を180°変えて
「カカオ=チョコレート」という既成概念から離れ、一から設計していった先に「カカオ=フルーツ」という新たな視点が生まれた。
そういうわけで、今回ラベルデザインは、COEDOのスモールバッチシリーズで展開している「フルーツエール」を手掛けるデザイナーさんに依頼させていただいた。
出来上がったときの喜びを少しでも皆さんと共有できたら幸いです。
乾杯!
※今回スモールバッチでの醸造となります。数に限りがございますのであらかじめご了承ください。
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